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28.宇井純さんの死を悼む!

        (文中の太字は編集人が強調のために付したものです。)

リベラルな社会目指し闘った巨人 宇井さんの死去に接して

                 宇沢 弘文

 ・・・・・・宇井さんは東大で応用化学を専攻し・・・・・・工学部助手になったが、その頃から、水俣病が大きな社会問題となりはじめた。チッソが長年にわたって、水俣湾、さらには不知火海全体に垂れ流した膨大な量に上る水銀によって、多くの人々が脳神経中枢を冒され、言語に絶する苦しみに悩まされつづけてきた。宇井さんは戦後の窮乏を象徴する食糧不足をもっとも効果的に解決する科学として応用化学を選んだが、その応用化学が神聖な海を汚し、魚を侵し、多くの人々の健康を冒し、その生命を奪い、やがては地域社会の崩壊すら招きかねないことを知って、大きなショックを受けた。と同時に、日本社会に強く残っている社会的、経済的、因習的差別につよい憤りを覚えて、数多くの公害反対運動に携わり、常に往民の立場に立って、行政や企業のあり方を厳しく追及しつづけた。

 東大紛争のときも、宇井さんは全共闘の学生たちが提起した問題に対して誠実に対応し、同時に東大における教師、研究者のあり方に対しても厳しい批判を突きつけた。紛争後、東大が倫理的、学間的に自滅の道を歩み始めてからは、教室を一般に開放し、自主講座「公害原論」を開講して、公害問題を一つの学問的領域として確立するために大きな貢献をした。全国各地の公害反対運動に指針を与え、住民運動のあり方に大きな影響を及ぼした。沖縄大学に移ってからは、沖縄の美しい自然を保存し、平和を守るための運動に積極的に関わってきた。

 今、アメリカの産業的、金融的資本が市場原理主義を武器として、世界の多くの国々の自然、社会、文化、そして人間を破壊しつつある。市場原理主義は、儲けることを人生最大の目的として、倫理的、社会的、人間的な営為を軽んずる生きざまを良しとする考え方である。宇井さんが、その生涯を通じてもっとも嫌悪し、闘ってきた、人間として最低の生きざまである。この市場原理主義が、小泉政権の下で、日本に全面的に輸入され、社会の非倫理化、社会的靱帯の解体、文化の俗悪化、そして人間的関係自体の崩壊をもたらしつつある。

 この危機的状況の下で、宇井さんを失うことの損失は大きい。・・・・・・しかし、・・・・・宇井さんの志を継いで、日本をもっと人間的、自然的、社会的に魅カのあるものに変えてゆくために力を借しまない人々が必ずや大勢出るに違いない。・・・・・・

 (うざわ・ひろふみ=東大名誉教授、経済学)

 沖縄大名誉教授の宇井純さんは11日死去、74歳。

    毎日新聞 06/11/16()朝刊

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