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25.2ちゃんねるの住人とはどんな人? そして、彼らの怨念とは?

 これらについて、辛淑玉さんは次のように述べています。(なお、文中の太字は編集人が強調のために付したものです。)

        辛淑玉(人材育成コンサルタント)

 ここ数年、インターネットというサイバースペースの中で、すさまじいバッシングの嵐が吹き荒れている。例えば掲示板の書き込みなどでは、女、外国籍住民、被差別部落民、学歴の低い者、障害者、セクシュアルマイノリティといった、いわゆる社会的弱者が、匿名の陰に隠れた卑劣な差別発言のターゲットにされている。

 しかし、この匿名の攻撃者たちが決して叩こうとしない対象が、日本人で、若い男で、そして高学歴の貧乏人である。つまり、彼らこそが、こうした攻撃者たちの正体なのだろう。

 学歴は高いのに正社員にはなれず、職についても高い収入は得られず、不安定な身分を強いられ、時には彼らが見下す女や外国人や障害者などより低い位置に置かれることさえある。そうしたことへの怒りのマグマは、バブル崩壊後着実に蓄積されていたに違いない。

 近年、少しずつ積み上げられてきた社会的弱者に対する人権擁護や社会的地位の改善政策がもたらした、わずかな生活のゆとりや人間らしい暮らしですら、これらの人々にはいらだちのもととなるのだろう。

 1960年代、アメリカで成立した公民権法によってアフリカ系アメリカ人の地位が多少向上したことに激しい憎悪を抱く、いわゆるプアーホワイトの存在がその後政治的に注目されるようになったが、ネット上で憎悪をむき出しにする攻撃者たちは、いわば日本版プアーホワイトとでも呼べばいいのだろうか。

 多くの政治学者が分析するところによれば、今回の選挙での投票行動の特徴は、従来自民党支持者ではなかった層が自民党に投票していることだという。この中で私が特に注目しているのは、都市で生活する未組織の事務系労働者やサービス業に従事する若年労働者たちの存在である。

 彼らは、中小企業で働く下層サラリーマンや非正規雇用の店員など、相対的に低い地位に甘んじている都市大衆だ。

 いわゆる社会的弱者が、自分たちの権利を少しでも前進させるために政治に敏感で、活発に社会的な発言を行う傾向があるのに対し、これら日本版プアーホワイトたちはほとんど政治に関心を示さない無党派層として消費主義に徹してきた入々だ。

 しかし彼らには、組織された労働者である公務員や大企業の正社員たちに対する、ある種の怨念がある

 彼らの目には、正規雇用者とはまぎれもない特権階級、白分たちの雇用を守るための調整弁として彼らを使い捨てにし、経営者と共に踏みつけにしてきた者たちに見える

 そして彼らにとって労働組合は、正規雇用者のためだけの雇用確保機関であり、特権階級にサービスを提供することしか考えず、経営者とも闘わない、単なる互助会的組織でしかない。

 本来、非正規雇用の労働者たちにとっても、労働組合は自分たちの地位を改善するために必要な共通の社会資源であるはずだ。しかし、そのような認識を持ち、地域社会の再生やパート、アルバイト、派遣労働者などの雇用や人権を守るために踏ん張ってきた労組は私の知る限り、ごくわずかしかない。

 未組織の都市大衆の目に映る労働組合は、自分たちと仕事を分かち合ってくれる組織ではなく、むしろ経営者の代理人に近い。そしてリストラや契約労働の拡大などによって雇用環境が激変し、非正規雇用が多数派となった今日、組織化された労働者は、かつてとはまったく違う意味合いを持つ特権的存在となってしまった。今回、小泉劇場という政治参加の舞台に久しぶりに登場し小泉政権の圧勝を支えたのは、これら日本版プアーホワィトたちの怨念だったと言っても問違いではないだろう。小泉首相の「改革」は、特権的労働者をそのぬくぬくとした地位から引きずりおろし、自分たちと同じ惨めさを味わわせてくれるに違いない。彼らはそう思ったのではないか。

 その象徴としての生け賛が「公務員」であり「郵政」だった

 小泉首相は今回の総選挙で大衆の怒りを巧妙につかみとった。そして、暗い後ろ向きのねたみやそねみ、他人の不幸を願う感情を見事に組織化し、操作することに成功した。かつて政治ともっとも縁遠かった入たちが自民党に投票した結果、未組織の無党派層が多い都市部の小選挙区では民主党は総崩れになり、東京都内の25小選挙区で議席を確保できたのは、菅直人・元民主党代表だけだった。(後略)

 (シン・スゴ/1959年生まれ。在日コリアン3世。人材育成コンサルタント会社「香科舎」代表。明治大学政治経済学部客員教授。著書に『怒りの方法』『鬼哭啾啾

』など。)

  論座 05年12月号

   「野党に欠けているもの それは『怒り』です」

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